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逃げ。
久々に押メグとか。
 

 トイレから戻って、個室を隔てる襖に手をかけようとすると、内側から開いて驚いた。
「……なんだよバンちゃん、自動ドア?」
 驚いたには驚いたが、驚きで声も出ないという事でも無いから、そうやって、内側から襖を開けた人物に向かって軽口を叩くと、メグルはゆらゆらと頭を揺らして無言でいる。
 ははーん。飲んだな。
 メグルは酒に弱い。カルピスサワーの二、三杯で、目を瞬かせて、酔うと眠くなる性質なんだろう。飲み会の最中でも構わず欠伸をして。もそもそ動いて部屋の隅っこで、人のだろうが自分のだろうが構わず座布団や上着を取り出して積み上げ、そこにころりと横になって寝てしまう。
 あーもーしょうがねーな。とか言われつつも、誰も嫌がらないのはそれだけ四隊に慣れたんだろう。
 が。
 今日は珍しい酔い方をしてる。
 無反応になることはついぞ無かったが。
「おしっこ」
「は?」
「おしっこ……」
 メグルは子供みたいな口調でそう言うと、ふらふらゆらゆらしながら近寄ってくる。脇に避けると、居酒屋のゴム製のつっかけを何とか足に引っ掛けて、トイレのある方向に向かった。
「……どうしたのバンちゃん。酔ってんじゃ?」
 襖を閉めながらそう言うと、
「あいつ間違って焼酎ストレートでいっちゃったんですよね」
「は?」
「水と間違って」
 これ、と指さされたのは、細長いグラスの中の透明な酒。
「あー……」
 そう言えば、トイレに立つ前。もう既にメグルは部屋の隅に転がっていたような。
 いつもメグルが起きるころには殆どお開きになっている。
 お会計の声をかけるのと入れ替わりで水とおしぼりが用意されてるのをいい事に、自分の一番近くの水を飲んでいるのを何度も見かけた事もある。
 甘い酒を飲めば、咽喉も渇く。下戸なら尚更に。
 いつものように、けれどいつもよりも早く目が覚めて、寝ぼけた頭で、誰かの焼酎を勘違いして、口にしたんだろう。
 そして、プライドの高いメグルの事だから、口に含んだものを吐き出さないで飲み込んで。
「子供じゃないから、自分で吐きに行くんでしょう」
 長倉にそう言われながら、そうね〜といって、あ、これ飲んでも?とメグルの口をつけた焼酎を煽る。あぁ、キツイ。これを一口…カルピスサワー一杯分よりもアルコール度は高いだろう。
 これを飲んじまったのか。
 ストレートではやや早めのピッチで、焼酎のグラスを空にすると立ち上がる。
「押尾隊長?」
「おしっこ」
「え?さっき行って来たばっかじゃないすか?」
「頻尿なんだよね〜こうおっさんにもなると。ハルンケアだよハルンケア」
 おどけた口調でそう言うと、座敷内が、どっとわく。
「ハルンケア?マジっすか?」
「そーなのマジなの。プールで漏れてたらごめんごめん僕イケメン!なんてな!ぎゃはははは!」
 漏らしている訳は無いがそう言い捨てて襖を閉める。ぎゃ〜!と悲鳴を上げられるのを背中に感じながら、サンダルを履くと、少し足早にトイレに向かう。
 途中、水のグラスを持っていた店員さんにお願いしてひとつだけ拝借すると、トイレの扉をあける。
 メグルが居た。
 用を足したのか、それとも吐くことができたか。いや吐瀉物の臭いはしないから用を足せたのか。手洗いの水を出しっぱなしにしたメグルが、壁に寄り掛かりながら目を閉じている。
 おいおい、大丈夫か?
 舌打して、肩を掴む。
「バンちゃん?バンちゃん……おい、メグル…メグル……」
 ちゃんと名前を呼ぶと、メグルが目を開いたので、一応ほっとする。
「メグル……オッシーがオイをメグル……おかしかね〜…」
 目を開けて確認してそれだけ言えるなら平気か。さらに安堵して、はいはいバンちゃん、お水飲んで。と水のグラスを向けると、メグルはいーやーと言って首を大きく横に振る。あぁ、頭なんか振ったら、余計回るぞ。と思えば案の定、くらりとしたメグルは壁に体を預けた。
「気持ち悪か……」
「だから水飲め、っての」
「嫌ばい」
 メグルはそう言って、首を…て、あぁあぁ、何なんだ一体。
「オッシーは、いつもオイを騙すもん。また焼酎ば飲まされるごた」
「そんなことしねぇよ。ほら」
 ためしに一口飲んでみせる。
「水だ水」
「信用できなか。オッシーは酒に強か。そがん簡単に飲めると」
「なんで信用しないんだよ?」
「オイの事嫌っとるやろ?」
「……は……?」
 なぜに好き嫌いの話が出てくる。
「オイのこと嫌いだから、いつまでたってもバンちゃんて、そがん呼ばれ方嫌って言うとるとに呼ぶもん、オイの事絶対嫌っとるばい……」
 だけん、飲まん。メグルはそう言うと、ぎっちり、と口を閉じて横を向いた。
 何で、こう……こんな所で。
「なんで、俺はみんなの事愛しちゃってるのに、バンちゃんはそれを信用してくんない訳?」
 おどけると、メグルはますます意固地の様相を強くする。
 勘弁して欲しい。
 こういうやり取りなんか、前の嫁ともした事がない。それを男の部下と、ちゃんと言ってって、何を……
「バンちゃんの事好き」
「メグルばい。バンちゃんって誰ね、知らんよ」
 これは酔っていながらも地味に嫌がらせというか、悪ノリなんだろう。
 ったく。なんてぇ奴だよ。
「……メグルを、好きだよ」
 だから水飲めよ。そう言ってグラスを出すと、メグルは大人しくグラスを受け取り、入っていた水を全部飲み干す。
 その様子を見ながら、あぁ、恥ずかしい。なんだよ。嘘でも真面目に告白とか。自分の持ちキャラじゃねぇなぁ。とか、そんなの年下を振り回して楽しむもんだ、なんて呑気に考えて。
「ん」
「ん、て何だよ。しょーがねーなぁ」
 そう言って突き出されたグラスを持って、仕方ない。と笑うと。
「オイも好き」
 いきなり、ものすごい力で顔を掴まれる。な?とかは?とか思う間も無く。
 濡れた唇が、自分の唇を食んでいた。暫く唇の上だけで遊んでいたかと思えば、焦れたように顎を押さえられて、痛みに緩んだ所に、分厚い舌が入り込んで。
 頭が情報を処理してはいるが、事実を真実として受け取りがたい。
 とりあえず、持ったグラスを落とすまいと手のひらのグラスに意識を飛ばす中、メグルは好き放題口の中を味わって、放して、そのまま。
「バンちゃ……!」
 急にメグルの全身から力が抜けて、その場に崩れ落ちかける。とっさに腕の中に抱え込むと、メグルの口からは、気持ちよさそうな寝息が聞こえた。
「……オイオイオイオイ……」
 ネコ科の動物にいきなり引っかかれた。咬まれた。もしくは交通事故。
 それらと違うのは、痛くないだけ。あ。多少は抑えつけられた顔が痛いが。
 男の力で抑え込まれて、けれど、柔らかい唇と舌。そして今現在は、重いし、身動きがとりにくい……
 メグルの体は自分よりも小柄だ。けれど華奢とはほど遠い、厚みのある筋肉がついている。筋肉は重いから尚更。意識のない要救助者を抱えるようなものだ。
「よっ、ほっ。それ!」
 けれどどうにかメグルの体を抱えなおし、洗面台の危なくなさそうな所にグラスを置く。
 そうすれば、店員が気が付いてくれるだろう。少しだけ申し訳なく思いながら、トイレを出る。
 そのままずるずるとメグルの体を引きずるようにして歩き、宴の場に戻ると。
「……隊長何してんすか?」
 あっけにとられたメンバーが、抱え込まれたメグルと、俺の顔を交互に見るのに、
「バンちゃん潰れちゃった」
 そう言うと、一同は一気に爆笑する。アルコールが入ってるから何聞いても可笑しいんだろう。
「あーしょうがねぇなぁ、石井は」
「隊長、要救助者確保ですね〜」
「つか陸で溺れんなよ石井」
 皆が口々に言って、担いでいるメグルを座敷に運び込もうと立ち上がって寄ってくる。
 それを。
「いいわ」
 止める言葉が自分の口から出た。出て出た事実に驚いたが顔には出さず。
「バンちゃんの荷物と、服だけ貸して。あとタクシー呼んで帰るわ。それと長倉、これ」
 尻ポケットから財布を出して、飲み代を長倉に渡す。
「手伝いますか?」
「あぁ、いいよ。みんな好きに飲んでて」
 残りのメンバーのゴチになります!の声を聞いて、ひらひらと手を振ると座敷に背中を向けた。
 またずるずるとメグルを引きずるようにして歩き、レジにいた店員に、まだ連れが残っていること、タクシーをお願いしたい旨を伝えて、壁に寄り掛かる。少しだけメグルの重さが緩和して、そして、そうしてゆとりを持つことでじんわりと移る体温を感じる。
「……さて」
 どうしようかねぇ。酔っぱらいの解放をするのは当然として。
「バンちゃん、朝に覚えてるかな?」
 忘れてたら、忘れてたでいいのか、悪いのか。
 忘れられたくないのか、忘れてほしいのか。
「まぁ、でも久々かもねぇ。あんなふうにマジになって告白させられんのも」
 そんなことを呟きながら、くしゃり、と髪を撫でると、ううん。と腕の中でメグルが身じろぎをしてぷしゅん。と小さくくしゃみをする。
「可愛いくしゃみすんなよ成人男子!」
 まるで子供のようだ。眠ってしまった自分の娘を抱っこして帰る昔の感触を思い出しながら、それでいて全く違う、重い体、男の体。
 まぁ、そのときはその時。
「押尾様、タクシーが来ました」
「はぁい!ありがとうね〜」
 壁から背を離して、メグルを抱えなおしながら、なんだか自分がわくわくしているのに気がついた。
 まぁ、それもそれで。
| | 18:58 | comments(2) |
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Comment
逆じゃないもん!
そしておたんじょびおめでとございます。
Posted by: なつき |at: 2008/11/15 7:55 PM
押メグですよ。
うん。
で、朝ガンガンに二日酔いになったメグルは、オッシーの家!何で!好きって!キスて!オイはそがんことせん!て、広いし!離婚した奥さんと子供の写真とかあるし!と、パニックですよ。
拾いたての子猫みたいに、フー!シャー!しますよ!
オッシーにバンちゃんおもしれーとか思われますよ。
自覚しないオッシーへの恋とか、自覚しないメグルへの愛情とかの辺りです。
だって男だし。とお互いにね!

んで、長倉からオッシーにハルンケア内服液のプレゼントがあるんですよ、次の日。長倉まじめ!ぎゃはは!
Posted by: なつき |at: 2008/11/15 7:54 PM








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