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『 双方向 』
050908初出 060526









「大羽」
「ん?」
「100km行軍の時さ、俺、多摩川沿いで大羽見かけたんだ」
「来とったんか」
「うん」
「何で声かけんかった?」
「かけたよ〜でも気付かなかったから」
「そうか、悪かったの」
「ううん。俺も邪魔しちゃいけないって思ったから、無理に呼び止めなかった」
「ほうか」
「頑張ったよね、大羽」
「おう」
「頑張ってたよね、大羽」
「…くすぐったいけぇ、そがあ繰り返すな」
「えへへ〜でも、嬉しくてさ」
「ばぁか。何言うとんのじゃ」


 本当は。
 星野がいるのに気付いとった。
 星野の声、どんなに遠くても聞き漏らす筈が無い。
 けれど。
 あの時。
 本当に苦しくて。
 空腹で足の痛みは紛れていたけれど、それでもやっぱり痛みはあって。
 無性に星野に会いたくて。
 大丈夫かって言って貰いたかった。
 だからこそ。
 星野に呼ばれているのが分かっていたのに、振り向けなかった。
 振り向いて、目で確認して、立ち止まって。
 星野が側に来るのを待ったりなんかしたら。
 きっと。
 泣き言を言ってしまう。
 そんな気がして。
 別に星野に泣き言を言うのが悪いわけじゃない。
 かと言って泣き言ばかりをいっていいものでも無いけれど。
 会いたいと思っていたのに、こんな事をするのはおかしいと思うけれど。
 そう思うことが、自分にとっての力になると。
 だから本当に会ってしまう事は、いけない。
 行軍では駄目だと、そう思って。
 そうでもしないと、張っているものが途切れてしまう。
 星野に甘えてしまう。
 きっと、行軍だけは。
 それじゃいけないと。
 まずその自分に打ち勝たなきゃいけないと。
 あの時だけは、話してしまったら星野の存在を強さに出来ないと。
 そう思って。
「星野」
「ん?」
「ありがとう」
「…何、急に…?」
「何でもなぁで」
「なんか変〜」
 そう言いながらも、星野は嬉しそうな顔でくすくすと笑う。
 きっと分かっているんだろう。
 気付いていたことも。
 考えていた事も。
 礼を言った意味をも。
 そんなお前だから。
「モト」
「…?何?」
「…」
 手を伸ばして、星野の手首を掴んで、手の平にひとつ。
「ヒロ…」
 キスを受けた星野が近付いて、そのまま緩く押し倒されて、重みを受ける。
 星野。
 星野。
 好きじゃ。と小さく呟くように言えば、俺もだよ。と。同じ答えが返って来た。
















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