スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| スポンサードリンク | | - |
Entry: main  << >>
『 プライベートムービー 』
050320初出 050419 080103改稿









 まだ夜明けも遠い時間。
 ふと目が覚めた。

 隣に寝ている大羽の寝息が心地良いけれど、まどろみに戻るには少しだけ目が冴えたから、起こしてしまわないようにそっと布団から抜け出して、脱ぎ捨てた自分の下着を身に着けて、台所に立つ。
 秋の気配で、裸足の足の裏が台所の床に熱を取られてひやりとする。
 冷蔵庫を開けて、ミネラルウォーターの入ったペットボトルを取り出した。
 扉を開けた時の光と、思ったよりも大きなモーターの唸り声に大羽の様子を窺うと、大羽は深く眠りの底に落ちたまま。
 受け入れる側のほうが負担の大きいセックス。
 いつだって無理させないように、負担をかけないようにと注意を払っているのだけれど、払っていられるのは最初だけで、いつの間にかお互い夢中になりすぎて。
 自分にセーブが出来無い甘さは、やっぱり愛情の強さなのかと、半ば自己弁護のような事を頭に浮かべて、苦笑する。
 それでも淡いオレンジがかった白い色の光で伺って見た大羽は、苦痛や疲れを顕著にしていないように見えたから。
 ちょっとだけほっとする。
 部屋に戻って、壁に寄りかかるようにしながら畳の上に腰を落として、眠る大羽を眺める。
 うつ伏せで、顔だけを横に向けて、穏やかな寝息を立てている。
 …ヒロ。
 大好き。
 愛しくて仕方がない。
 何度も思う。
 この一瞬も、今までもこれからも、この気持ちのまま。
「ヒロ、好きだよ」
 口にすれば圧倒的な幸福感。
 これほどまでに想う人に巡り逢えた幸せ。
 この一瞬一瞬だって、愛し慈しみたい。
 寝ている状態の大羽に、行為を為すなんて事はしないけれど。

 これぐらいは許されてもいい?


 携帯に手を伸ばし、カードの容量を確かめて、動画モードにする。
 試しに覗いて見れば、明かりのない闇の中で、液晶画面は暗く何も映し出されない。
 電気をつけて、起こしてしまうのは嫌だった。
 眠る大羽を独り占めしたいから。
 もちろん誰にも見せる事はないけれど、より、確かに、手の平の中に。
 迷って、テレビをつける。
 消音ボタンを押して音を消すと、ブラウン管が作り出す光は薄ぼんやりとした明るさで、シーツの上の大羽を照らす。
 部屋の電気より、はるかに薄暗い。けれど、大羽の輪郭を捉えるには、十分な明るさ。
 液晶にも、大羽が映る。
 録画ボタンを押した。
 テレビの画像の動きによって、その輪郭は淡くぼけたり、艶めかしくすべらかになる。
 同じように、反射する光で様々に色を変え、ゆるく呼吸をして揺れる肩の動きで、少しずつ陰影が変わり。
 少しずつ、それでいて様々な大羽が、映し出されて、記録される。

 数分間の俺だけのヒロ。




********




「おはよう」
「…何じゃ、ワリャ寝とらんのか?」
「ううん、寝たよ?少し早く起きただけ。でもヒロが気持ち良さそうにしてたから、邪魔しないようにって静かに抜け出した」
「ほうか」
 起き抜けで寝てしまって額にかかった前髪をくしゃりとやると、大羽が止めい。と手を避ける。
「…朝からイチャイチャしようよ」
「寝言は寝て言え」
「え?俺寝言言う?」
「主に起きてる時な」
「寝言じゃないってば」
 ふわりと笑うと、見つめた先で所在なさげに視線が泳ぐ。
「風呂使う?」
「…おう」
「一緒に入る?」
「アホ!」
「残念」
 訓練のときは平気だけど、こういう時だけひどく恥ずかしがりな様子で、大羽はシーツを引きずったまま風呂場に向かう。
「あ、それ洗濯機に入れておいて」
「おう」
「それからヒロ」
「何じゃ」
「出たら買い物付き合ってよ」
「何買うんじゃ?」
「SDカード、ミニ」
「…?ま、ええ。行っちゃる」
 決して消せない、プライベートムービー。
 他の誰にも見せる事の出来ない、プライベートムービー。
「じゃ、外いって飯も食おう」
「モトの驕りでの」
「何言ってんだよ」


 もしかしたら俺は、物凄く独占欲が強いのかもしれないよ、ヒロ。







END
| なつき | 00:00 | - |
スポンサーサイト
| スポンサードリンク | 00:00 | - |

PR

Calendar

    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
<< August 2019 >>

Profile

Recommend

Search

Entry

Comment

Archives

Category

Link

Feed

Others

無料ブログ作成サービス JUGEM

Mobile

qrcode