スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| スポンサードリンク | | - |
Entry: main  << >>
『 ジャモカア―モンドファッジ □ッキ―□―ドレギュラ―カップ  』
050920初出 060917









「…えーと、ジャモカ、アーモンドファ−ッジ?と、□ッキー□ードを、レギュラーでカップ」
「お一つですかぁ〜?」
「あぁ、…一つ」
 ご注文は?と店員に言われて、何とか記憶していた言葉をメニュー表を見ながら注文して、はぁ、と溜息を吐く。
『ジャモカア―モンドファッジ□ッキ―□―ドレギュラ―カップ』
『…は?』
『ジャモカア―モンドファッジ□ッキ―□―ドレギュラ―カップ。もう言わんよ』
『…あ、あぁ、わかった』
 車の助手席に座っているって言うのに膝を抱え込んで顔をその膝の上に押し付けてしまったあいつが、何度か話し掛けている最中、そう漏らした言葉と、指差された場所が頭の中で繋がって。
 すぐさま飛び出して店の中に入ると、店の中は想像以上にごった返していた。
 何でこんな時に!と舌打ちすると、胸ポケットで携帯が震えた。
「…チッ…」
 もう一度舌打ちして、携帯を開けば電話ではなくてメールで。
 送信相手の名前を確認して、眉が落ちた。
 ――完全に咽喉やられたみたい。
   声が出ないから、メールにするね。
   スポーツドリンク、帰りに買ってきてくれないかなぁ。

 文面を読んで携帯を閉じると、ぐっと唇を噛み締め、手の平の中の携帯を強く握り締める。
 妻からの、弱気な文面。
 どうしようもない罪悪感。
 さっき電話があったときは、かすれていたけど辛うじて声が出ていた。
 そもそも出かける前は、息子は熱を出していたけれど、もう少しで、治りかけだから。とそう言った本人は、風邪をひいていそうな素振りは見受けられなかった。
 だから。
 出てきたのもあった。
 出て来ざるを得なかったのもある。
 そう思いながら、路肩に止めた車を伺う。
 こちらからは車内は見えないし、車内からもこちらが見えないのはわかりきっていたけれど。


『え?どうしたんだママ。え?コウの風邪がうつった?』




 運転中に電話を受けて、路肩に車を止めて受ければ、風邪をひいたとのSOSの内容。
 電話を受けてすぐさま、今車内に残っている奴は。
 電話を受けた事、車を路肩に止めた事、色々と気に入らなかったんだろう。
 すぐに発進しようとシフトレバーにかけた手を止められて。
『なんっ…』
 思わず文句を言おうとした俺を、視線だけで黙らせて。そのままシートベルトを外すと、座席の上で不安定な体育座りを。
『…スマン』
 …謝ると言うのはいささかおかしな具合なんだが。とそう思いつつ謝りの言葉を口にすれば、ますます不機嫌そうな顔をして、その顔を膝に伏せてしまった。
 困惑した。
 そもそも、もしも謝られるとするならば、謝られるのはこちらなのだから。
 助手席に座っている男に、言うなれば俺は恐喝されている。
 しかも。
『断ったら奥さんにばらすけん、来て』
 体の関係をネタに。まぁなんて、滑稽な事だ。けれど、笑う事は出来ない。
 無理矢理身体を繋がれて。
 自分の知らない間にその写真を撮られて。



『こがんが分かりやすかね』

 いわゆる顔出しのハメ撮りを見せられた時には、心が冷えて冷えて仕方が無かった。
 そんなものをばらされたら、たまらない。
 言われるがままに呼び出しに応じ。
 奴が飽くまで。と、苦汁を飲んでいる。
「お待たせしました〜ご注文どうぞ!」
「あ、あぁ」
 筈だった。
 メニューを見、記憶を辿って漸く注文してみれば、ピンクと白を基調にしたカップに、いかにもあまそうな2種類のアイスが入れられて、ピンク色のスプーンが差し込まれている。
「本日31日なので割引となっております〜」
 それでこの混み様か。と納得して、紙のカップを受け取り、お金を払って店を出る。
 車に戻れば、そいつはまださっきの格好のままでいる。
「ほら、注文の品」
 ドアを開け、乗り込む前にとりあえず渡すのにカップを差し出すと、伏せられた顔が上がり、手が伸びてカップを掴んだ。
「それでいーんだろ。石井」
 車に乗り込んでそう問い掛けると、石井は足を下ろして、アイスクリームに刺さったピンクのスプーンを掴んで、何も言わずにひとすくいして、口に運ぶ。
「…お前、いただきますぐらい言えよ…」
 うちの子だって言うぞ。との言葉をぐっと飲み込む。これ以上機嫌を損ねては…
「…車出すぞ」
 いつまでも車を止めておくわけにもいかず、車をスタートさせる。
「シートベルトしろよ」
 返事は返ってこず、横目でちらりと見れば、もくもくとピンクのスプーンを口に運ぶのが見える。
 ばれないように溜息を吐いて、さて、どうするかと思い悩む。
 風邪をひいてしまった妻と子の待つ家に戻るのが尤も優先したい事項のはずであるのだけれど。
 下手な事を言って、もし、あの写真を…
 そんな事を考えていた時、ふいに石井がぽつりと言った。
「海」
「は?」
「海が見たか」
「…何処がいいんだ」
 問い返せば返事はない。
 海。
「くじら瀬でいいか」
 また返事は返って来ない。むっとしながらも、車をくじら瀬方向に向かうのにウインカーを出す。
 車の流れに沿ってみちなりに行き慣れた道路を走れば、すぐにくじら瀬に着いた。
「着いたぞ」
 またも無言。
 一瞬、写真の事を忘れた。
「あのなぁ…」
 言葉は続けられなかった。
 文句を言おうと身を捩った時には、すぐ目の前に石井の顔があって。
 あぁ、こいつの顔。綺麗なんだよな。そんな事が頭を過ぎった時、かちん。と固い物が触れ合う音が耳に届く。
 冷たくて甘い。
 その冷たくて甘いものがグネグネと口の中を蹂躙するのに、一瞬にして我に帰る。
 けれど。
「…ん…ふ、ぅ……」
 苦汁を飲んでいるのが、筈になってしまう理由。
 こうして。
 キスを受ける。快楽も、享受する。
 無理矢理で始まった筈なのに。
 目を閉じて、うっとりとするほどの、キスを。
「…っは…」
「…美味か?」
「…甘ぇんだよ…」
 唇が離れてそう囁かれて、目を伏せながら口元を手の甲で拭う。酷かね。と呟く石井を一瞬睨み、窓の外を見渡す。
「誰も見とらんよ」
「うっせぇ…」
 そう言って、手の甲を見てギョッとする。
「おま…食うの下手…」
 手の甲にはべったりとチョコレート。その口元を見れば、分厚い唇はチョコレートで装われている。
 あぁ。と石井は呟いて、肉厚の舌でもって自分の唇をぺろりと舐めあげる。
 ゆっくりと、余す事無く見せ付けるように動く舌に、目を離す事が出来ない。
 それを知って石井はくすりと笑って、ピンクのスプーンを咥える。
「やらしか顔になっとうよ…」
 そんな風に言われて、思わず汚れているほうの手で顔を隠せば、石井が舌を出してその甲のチョコレートを舐めあげようとするから逃げる。
「…やめろ!」
 ダッシュボードの上に無造作に置いておいたウエットティッシュのケースを掴んで一枚取り出すと、ごしごしと拭き取る。
 石井は急につまらなさそうな顔になったが、じきに何かを思いついたように、笑って。
「あ」
 もう殆ど残っていないアイスクリームのカップに中指を差し込んで、ぐるりとカップの内側を滑らせ。
「家、奥さんと子供熱ば出しとるやろ。上手にできたら帰ってもよかよ」
 溶けたアイスクリーム塗れの指を差し出した。
「オイのにするみたいに、舐めんしゃい。得意やもんねぇ。班長さん」
 そう言って、指を一旦自分の顔の前にもって着た石井は、ちゅ。と自分の指先にキスをしてその指を。
 躊躇うと、それすら許さないようにその指は唇に押し付けられて。
 しぶしぶといった体で口を開く。無理矢理抉じ開ける様には入ってこない指を咥えれば、生温いチョコレートと、コーヒーの香りと味。
 するように。
 そう言われて、石井の物にするように舌を這わせ、口蓋や頬の内側を使って擦り上げる。
「もっと」
「…」
 口を離そうとすれば、それを知るかのように石井の強要する声がかけられて、それが何度も繰り返す。
 嫌だ。
 家には、風邪をひいたかみさんと、コウが…
 これ以上…


「…よかよ」
 漸くかけられた許しの言葉に、唇を離す。
 気付けば、シフトレバーの上には滴り落ちる俺の唾液と、そして。
「よかよ。そがん顔して帰れるんなら。帰ってもよか」
 そう言われて顔を上げ、バックミラーで自分の顔を確認すれば、すっかりといっていいほど蕩けきった顔。
 そして。
「勃っとう」
 言われなくても、舐めているうちに体の奥には火を灯され、触られなくても一人でに。
「舐めた後に、いつもぶち込まれるもんね。思い出したと?」
 あぁ、そうだ。口には出さなくても体全体が如実に。
「ホテルば、いこ」
 抗う事など皆無とでも言うように、首は縦に動いた。
 ゴメン。ママ、コウ。
 罪悪感までも、性感になっていた。
















END
| なつき | 00:00 | - |
スポンサーサイト
| スポンサードリンク | 00:00 | - |

PR

Calendar

     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< May 2020 >>

Profile

Recommend

Search

Entry

Comment

Archives

Category

Link

Feed

Others

無料ブログ作成サービス JUGEM

Mobile

qrcode