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『 小指の思い出 』
060424








「プラチナ?」
 最中そう聞こえた気がして、ぐらぐらとする意識を引き上げて、え?という顔をすれば、シーツを掴んでいた左手を急に掴まれ毟り取るようにシーツから引き剥がされた。
 引き剥がされて、人形のように扱われても、もう抵抗する力がなくなるほどに犯されまくっている。体の下のシーツはべとべとで、普通なら気持ちが悪いほどに滑っているのに、脳がそれと認識しない。
「プラチナ?」
 再度問われて、あぁ、結婚指輪の事を言っているのだとわかって、ぼんやりとした頭のまま、ただ惰性のように頷けば、ゆるく握る形の手を開かされるようにして、薬指が根本からべろりと生温く舐め上げられた。
「…見せ付ける為?そがん無意味なこつしても、変わらんよ」
 何が。
 そう問う間も無く酷く奥深くに突きあげられて、内臓がせりあがるような感触に思わず息を吐く。声にならないその呼吸を聞いて、石井は満足したような笑みを浮かべリズミカルな律動を開始した。
「あっ…あっ…あっ…」
 横からハメられて、左足は肩に担ぎ上げられるようにして、抽送される。
 こんな風に男に尻を嬲られて声を上げるようになるなんて思っても見なかったけれど、正直な所、酷くさえされなければ、それはとても気持ちがいい。
 思えば、こんな関係になったのは、暴力と強姦で。脅されるままに呼び出されて続いて今に至って。
 初めは何でこんな風に自分が淘汰されるのかの理解が出来ずに苦しんで。けれど今石井との関係で苦しむのは、何故石井が、自分が抱く事を止めないのか。で。単なる性処理の道具として扱われているのだろうと、悲嘆にさえくれて。
 そうやって悩む反面、抱かれれば体が添う、慣れる。痛みよりも悦を貪欲に探して。
 今では呼び出されれば素直に出向いて、なおかつ気持ちがいいと、そうなって。
 指輪を外す事まで、忘れるほどに。
 可笑しな話だ。体から始まっているのに、今では、石井の事を。
 男に抱かれる事に快楽を認識してしまった自分の体に思わず嘲笑すると、抽送する動きはぴたりと止まった。
「…なんね、そがんオイが可笑しか?」
 低い声だった。
 一瞬何を言われているかわからなくてぼんやりとした眼差しのまま、石井を見上げる。
 頭が回らないからこそ何の反応も返せないままただ見ただけなのだけれど。
 石井は、さっきまで浮かべていた満足そうな笑みをすっと消して、ただ冷たいだけの眼差しで俺を見下ろしていた。
 その冷たい眼差しに、反射的にびくりと動いて、身を守るような本能なのか、石井に掴まれている左腕もまた動いて。
 けれど石井は掴んだ左手を、より強く、痛いほどに握り締めて。
 舐め上げた薬指に、唇を寄せた。
「このまま」
 指の近くで話されて、ぬるい性感が手を震わせる。けれど石井にはそれは拒絶にでも取れるのか、握る手に力が篭る。
「指輪ごと、噛み切ってあげても、よかよ」
 そう言って、ゆるゆるとした動きで、薬指を咥えて。舌で、指輪のラインをなぞると、指輪より下、指の付け根部分に歯を当てて。
 噛んだ。
「…ふっ…ん………」
 本気で噛み切るんじゃないかと思われるほど強く噛まれたそれは、指には痛みを、けれど。
 体には、喩えようのない悦を呼んで、言葉が齎す悦びに震え。
 曖昧になっていたはずの感情という感覚が鋭敏になって、思わず咥え込んでいた石井を締めれば、石井が中で膨れ上がった。
「…淫売…」
 締め付けと、自分の膨張とで痛みがあるのか顔を顰めた石井が自分の指から口を離し、律動を再び開始する。
 今度の抜き差しは、大きく、そして、深く。
 肩にかけられた左足が太腿の所から押さえつけられて、より開かされて、石井の腰が打ち付けられる湿った肉の音が部屋に響く。
 粘液が石井の幹で纏ろう音が、漏れ出た入り口でするのか、それとも注がれた奥底でするのかわからない。
「……ひぁ……あぅ……あっ……ふ………」
「…色気が無か声ばあげんと!耳障りばい…」
「ひっ…ひっ…あ…ふぁ…」
「こがん……淫売…」
 罵倒する声を浴びせられて、なお、感情が喜んでいくのを止められない。
 感情に付随して、どんどんと、体が溶けていく。欲に塗れて。さっきから先走りが止め処なく垂れて糸をひいているし。奥は吸い上げるかのようにうねるのがわかる。
 石井は。
 指輪を。
 無くしてしまいたいと。
 こんなちっぽけな金属に嫉妬しているのだと。
 あぁ、それを喜んでしまうのは、石井の言うように淫売か。
 けれど。
 『アンタ、気に食わなかけん。犯す』
 そんな言葉で始まった関係、だらだらと今まで続いた体の繋がり。
 それがただの性処理で無く。
 石井の感情もまた、こちらに向いていると、そう思ってはいけない?
「何笑っとると…?そがん酷くされたか?」
「ひぁっ!あ、あああ、あっ!」
 高ぶった先端を幹を痛いほど握り込まれて、声が出る。ジュクジュクした口を押さえ込まれて、弾けそうなほどの衝撃が貫いて。けれど固く握られた事で弾ける事は叶わず、その間も後孔を犯され続けて。
「あっ、あっ、イか…せ…イかせてぇ…イかせてぇ!」
 はしたないほどにそう訴え続けて、やっと幹を解放された瞬間に、意識を手放してしまっていた。




 目を覚ませば、どろどろだったシーツに染みた一部が乾くほどの時間が経過していた。
 体についたものは、体温ですっかり乾いている。
「…石井?」
 石井はもう居なかった。




「あら?パパ、どうしたの?指」
「あ、ぶつけてな」
「薬指だけ痣に?器用にぶつけたのね」
「っつーか挟んだんだ。船でドジやってな」
「馬鹿ねぇ。指輪してて痛くない?」
「平気平気。指輪も傷付いてないしな」
「…船で指輪は外してるんでしょ?」
「だから傷付けて無いって事!」
 ママに指摘をされて、そっと目立たないように左手のその痣を、手の甲を下にし緩く握る事で隠した。
 ママは気付かないままに、別な話を続けている。
 ありきたりな日常。夕飯後の団欒。子供がアニメ番組に夢中になっている間の、ほんの一時の。
「ちょっと、煙草吸ってくる」
「あら、窓開けてもいいわよ」
「子供二人居る部屋じゃ吸わねぇよ。コウ、テレビ近いぞ」
 断って、立ち上がる。リビングを横断して、廊下に出て、玄関から、外に。
 逃げ出した。
 玄関の扉を閉めると、そこに背を凭れて、ズボンのポケットを探る。
 やや潰れたセブンスターとライターを取り出して、一本咥えると、火をつけた。
 そして。
 玄関灯の明かりで、左手を。
 指輪の下に紫色に変色した皮膚。顔の前に左手をかざして、円を描けないその跡を見つめた。
 動かせば、鈍く潜む痛み。その痛みがどうしようもなく愛しい。
 石井は、俺が気を失ってる間に何も言わずに先に部屋を出て行ってしまって。
 だから、あのあとすぐに言葉の真意を問い返すことは出来なくて。
 そして今も、電話ですら、確認できない。煙草が入っている逆のポケットには携帯電話があって、メモリーには石井の連絡先があるけれど。
 一人部屋に残された時ですら追いかけて、いや電話でも問うことが出来ないのに、今更出来る訳がない。
 …きっとそんな資格を持ち合わせてはいない。
 諦め混じりに身を起こしベッドから下り、怒りの為か嫉妬か、酷く熱っぽく強く発せられた石井からの言葉を何度も反芻しながら、シャワーを浴びて身支度をし、支払いを済ませてホテルを出る。
 歓楽街の道路を歩きながら確かめるように指を見れば、言葉の強さと同じだけの痣が指に残って、鈍く痛んでいた。
 初めて明確に向けられた、石井の感情の跡が。
 けれど消えてしまうその跡。
「………」
 右手の指に煙草を挟んで、口から放す。
 そして。
「石…井…」
 惜しむようにそっと、唇を押しあてた。
 …今は、これだけで。


















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