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『 訓育者 』
050908初出 060524









「おー。何だ珍しい人間がおるで」
 きぃ。とブレーキの軋む音をたてて車が止まるのと同時に、声をかけられる。
「あ、どーも黒岩さん嶋本さん」
「応援か?星野」
「です」
「なんやひよこやのうなったら、ビクビクせんな」
「あはは」
 何気なく会話を交わしながら、視線は遠く小さくなっていく大羽を伺う。
「…なんや、大羽か。会うたんか」
 嶋本さんは知ってるから。にやりと笑う。
 知っている人に別に変に隠し立てする必要も無いから、えぇ、と返す。
「でも、気付かなかったみたいで、渡しそびれました」
 そう言って缶を二つ目の高さまで持ち上げて、助手席の嶋本さんに差し出した。
「お、なんやあいつらからお下がりか」
「要らないんですか」
「…お前大きな口叩けるようになったもんやな」
 うっわぬる。と文句を言いつつ受け取る嶋本さんに苦笑も足すと、意外そうな表情が向けられた。
「?」
「なんや。渡せんって、会わんでええのか?」
「行軍終わってからちゃんと会う約束してますし」
「お前臆面もなく言う言う。…出来んぞ」
 嶋本さんは黒岩さんに見えない所で人差し指と中指の間から親指を出す、ある手つきを見せる。
「…相変わらずですね」
「ホンマ偉なったな星野」
「ひたたたた!」
 生意気な口叩きよってといいながら、嶋本さんに口の端を捻り上げられて悲鳴を上げさせられる。
「なんやお前酒臭…酒はいっとるからか!?」
「そう思うなら大目に見てくださいよ〜」
「人が働いとるんに酒飲んでるんはムカツクんじゃ」
 十分に抓って溜飲を下げた嶋本さんが手を離してくれるまで、けっこうな時間抓られて。
 痛い。と文句を言えば痛いようにやっとるんや。と返事が返って来た。
「じゃあ行きます」
「基地に行くんやろ?」
「はい、ゴール見届けようと思って」
「何で来たんか。チャリか。飲酒運転になるから押して行けよ。で一応気ーつけてな。海保の恥さらすな」
「一言で済まないんですか」
「うっさいわボケ」
「皆の事、頼みますね」
「言われんでもする」
 そう言った嶋本さんの目つきは、軽口叩いてたのとはまるで違って。
 あぁ、こんな顔して俺も見られてたんだな。って。
 安心した。
「ありがとうございます」
「お前に礼言われる覚えないで。きしょ」
 それだけ言い残すと、窓から軽く手を振って、車は走り去った。
 ひよこのうちにそんな嶋本さんに気がついたら、俺もまた違っていたのかな。なんて、考えても仕方がない事をふと思う。
 それよりも何よりも。
「何より、心強いよ。ほんと」
 あの人が指導教官でよかった。
 皆も、そう思えるといい。
「今は無理かもだけど、ね。さーて皆より先には、行けるよね多分。…頑張れよ、皆」
 俺はそう呟いて、皆が進んだ先を、嶋本さんが向かった先を、自分も向かう道を見てから、大きく伸びをした。
















END 






































タイトルは造語です。者をつけてみました。
訓育って、素質・習慣などをよい方に伸ばすように、教え育てること。感情・意思・世界観などに関わる教育作用。広い意味の道徳教育。なんだそうな。
シマがした事ってば、もう色んな所に影響を与えたんだと思うんです。
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