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『 水の中の懲りない面々〜見守りたいの〜 』
050720初出 060221UP








「…なんやて?」
 3日目検定の昼休み。防災基地側に停泊しているおずの船員に基地の外で出くわして。
 なんやかんや世間話してた時ふと、星野どうしてるかな〜とか思ったのは単なる偶然。
 自分が途中まででも目ェかけたひよこ。動向が全く気にならん程冷血で無し。
 が。
「明日休み〜って?マジですか」
 自分よりも年かさの人と話すときには語尾に気を使うけれど、元々口が悪いのであんまり効果はない。
 相手も気にする性質ではないのか、あぁ。と頷いて。
「星野は明日明後日と休みだ」
 …まさかせんやろうな。
 とりあえず話もそこそこ切り上げて、まだひよこだった頃に急な呼び出し対応できるよう確認してあった携帯番号を呼び出す。
 星野。を選択して、発信ボタンを押した。
 船はここに停泊している。船にいるにしろ陸にいるにしろ出るはず。
『…はい』
 出た声には精彩が無い。
 元々ガンガン言って押さえつけた身分、そんな朗らかな声で出られるとは思っていないけれど。
「その声なら言いたい事分かるやろ」
『何をですか』
「あくまで惚ける気やな。なら俺も考えあるで」
『…』
 電話の向こうが押し黙る。
「どう言い訳しようか算段しとるクチやな」
 耳に小さく息を飲む呼吸が届く。
 盛大に溜息をつくと、俺は一言言った。
「見るだけや」
『は?』
「見るだけやったら許したる」
 え?とかあ?とか電話の向こうで言うのが聞こえる。ホンマこいつパニクリ易いやっちゃ。
「俺かてそこまで鬼やない。休みに見に来る事体はかまへん」
『嶋本さん…』
 星野のほっとしたような声。
 でも釘射したらんとな。
「でも手ぇ出したら、大羽の為にならんで。お前は指咥えて見とけ」
『!』
「も・し・も・や」
 言葉を区切って、一旦間を置く。電話越しでも星野が緊張してるんは手に取る様や。
「もしも俺の邪魔しくさったら、○○で」
『…え?』
「俺の邪魔したら、○○を○○して○○したろうって言っとるんや、己の耳はなんや、そんな簡単な日本語も分からんのか?」
 やさしゅう言ってやれば、電話口の星野は大人しくはい。と答えて、会話を終了させる。
 まぁ、来る事は許してやったからな。
「お、休みもうすぐ仕舞いやな。なんや余計な手間かけさせよって星野の奴…疲れるわ」
 俺は携帯をポケットに仕舞うと、検定場所へと足を向けた。
 より疲れる事があるとも知らず。





「え…たいちょ…マジですか…」
 検定も終わり、ヒヨコ共に成績発表を終わらせて解散さして。
 じゃあ、羽田に戻りましょうかといいかけた時、隊長がどえらい事言い放った。
 黒岩さんと専門官が席を外していたのは幸いか。
『神林が心配だから行軍を伴走したいが、駄目か』
 つうか駄目に決まってるでしょう。
 皆がいた手前、ルートとか行軍のペースを神林だけに教えることが出来んでうずうずしてたんは知ってます。
 知ってますけど。
 事神林の事になると頭の箍が外れるというか、レスキューの事でメモリいっぱいいっぱいの所に無理矢理神林詰め込もうとするから…
「駄目です」
「どうしてもか」
「どうしてもです」
「何故だ」
 よう考えてくださいよ隊長。
 ありえへん。
 一介のひよこに伴走してついてまわる、トッキュー隊の隊長…
 絶対ありえへんてマジで。
 勘弁してください。
 頼んます。
「…前例がありません。それに、ひよこに示しつきませんから」
 なんて言ってかわせばいいか、教えたってや高嶺さん。
 今はこの場所にいない三隊の良心高嶺さんに心で教えを請うも、にっこり笑う姿しか思い出せへん…
「仕方ないな」
 お!やっと諦めてくれたか!
 と思ったのもほんの束の間、一瞬、刹那、コンマ一秒。
「後からそっと見る事にする」
 た・い・ちょ・う!
「お前や黒岩には迷惑をかけないよう、別行動する」
 もう既にものっそい迷惑ですからー!
「あの、隊長…」
「大丈夫だ、シマ」
 大丈夫ちゃうですって。
「じゃあ戻るか。行くぞ、シマ」
「…はい」
 あかん。
 もう人の意見聞き入れるスペース無いほど神林がメモリに突っ込まれてる…
 何事も…何事も起こりませんようにと、願うしかない…



「…誰や?」
 羽田に戻って明日のための用意をしている間デスクに置いておいた携帯に、何件もの着信があったと告げられて一人呟く。
 携帯には見知らぬ着信が十数件。なんやこれありえん、誰か間違えて俺の携帯電話してるんとちゃうか?
 着信を確認するもかなりの疲労で(主に隊長のせい)デスクに突っ伏す。高嶺さんがすぐにコーヒーを用意してくれたんが泣きたいくらいありがたかった。
「ごちそうさまです」
「シマ、疲れてるみたいだね。大丈夫?」
「えぇ、まぁ…」
 理由を言うわけにもいかんので曖昧に誤魔化すと、三隊の良心は大人な対応でそう、と言うと、お菓子を机に数個乗せてくれた。
「血糖値、上げるといいよ」
「ホンマ、すんません…」
 何から何までありがたい。早速一つに手を伸ばして封を開けた瞬間、携帯が鳴った。
「ホンマ誰や!」
『お、出た出た』
 怒鳴りつけるように出た携帯には、のんびりとした声が出て面食らった。
 知っとるで。
 この声。
「神林んトコの」
『佐世保のしらはの潜水班長坂崎です』
 説明臭い台詞や。
「…なんか用ですか」
 あまりにも疲れて愛想なんか7割減でそう返す。
『冷たいな嶋本君』
「いやだって」
 俺はこの人に用なんか無い。ん?もしかして。
「神林の事ですか?」
『は?』
 ん?神林の事聞きたくて電話してきたんとちゃうんか?
「じゃ隊長ですか?」
『甚?甚の事なら直に電話するけど』
 いやするけどって言われても。
 全く訳が分からないまま黙ると、なんだか照れたような声色で、あーとかそのーとかひとしきり言ったしらはの坂崎さんは、急に石井。と言った。
「はい?」
『その、明日から100km行軍なんだって?』
 …
「…そうですけど…?」
 なんとなく嫌な予感がしつつ返事を返す。
『そのなんだ。嶋本君は指導教官としてついてまわるのか』
「警戒せんといけませんから」
 そこまで言うと、そうかそうかと一方的になんだか納得する声が。
 ますます嫌な予感がして、このまま適当に話し終わらせようと息を吸い込んだ瞬間。
『じゃあ、また明日電話するわ』
「はい!?」
 一方的!ホンマ一方的!
『いや、メ…石井の奴がどうかって、嶋本君から聞けるかもしれないって思って、確認の電話だから』
 坂崎!お前もかー!
 脳内ではどうとでも呼べるから脳内だけ呼び捨てにして怒鳴る。
『じゃあ明日』
「ちょ…」
 電話はかかってきた時の執拗さとは反してあっさり切れた。
「どうしたの…?シマ」
「…ははははは」
「シマ?」
 考えてみれば、あの人隊長の友達やった。
 友達って、ホンマどっか似てはるわ。
 人の話聞かんとこなんかマジでな。
「電源切ったろかい…」
「シマ…?」
 つうか誰も彼も身勝手や!



「ホンマ疲れたわ…」
 何で俺がこんな目に、と悪態つきながら着替えて外に出れば、冷たい風に綺麗な星空。
「おおさぶ」
 こんな時間までクソひよことその保護者に振り回されて。吐く息白いっちゅーんじゃ。
「早う帰…あ。そや」
 仕事も終えて、家に帰るその前に。
 携帯を手にして、目当ての番号を押す。
 ワンコール半で、勢い込んで相手が出た。
『はい!軍曹!』
「軍曹言うな、ボケ」
『はいいいい!すみません嶋本教官!』
「アホ!それも無しや!タカミツ」
『…はい』
 そう言われたかてすぐに言えんのは分かってる。知らずに口元が緩むが、目の前におるわけじゃないからそのままに。
「言った通りしたか」
『はい!』
「疲れ取れたか」
『はい!』
「マッサージして貰ったか」
『はい!』
「はいしか言えんのか?」
『いいえ!』
「お、バリエーションかわったな」
『はい!』
「戻っとるやないか!」
『はい、スイマセン!』
 俺かてな。
「もしかしておねーちゃんのおる泡のあるマッサージとちゃうやろな」
『いいえ!いいえ!』
「分かっとるわそんなもん。言ってみただけや」
『はい!』
 応援したりたいし、ホンマどうするんか教えてやりたいのに。
 我慢しとるっちゅーのに。
「よく寝ぇ。明日に疲労残しといたら承知せんで」
『…はい』
「なーに希望に満ち溢れた声出しとんねん」
 でも。
 分かるわ。
 心配したいし、見守りたいって思う気持ち。
 俺が一番、恵まれとるんも。
「じゃあな」
『はい』
 名残惜しいが、明日もあるしで電話を切る。
「ホンマ、はいしか言えんのか…」
 そう呟いてはじめて、自分が吐く息が白くならないほど冷え切った事に気付く。
「アカン。俺も相当や」
 せめて、明日は雨が降らんといい。
 そう思いながら足を帰路に向けた。






















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